「キャリアの越境を応援したい」 富士通から1年半でスタートアップに転職した「しがないラジオ」パーソナリティ池上純平のキャリアパス

「キャリアの越境を応援したい」 富士通から1年半でスタートアップに転職した「しがないラジオ」パーソナリティ池上純平のキャリアパス

2019年06月27 公開

CX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE」を提供する株式会社プレイドで、プロダクトの開発やテクニカルサポート、イベントを通じての技術広報、エンジニアの採用を担当されている池上純平(いけがみ じゅんぺい)さん。

本業と並行して続けているポッドキャスト「しがないラジオ」は累計再生回数25万回を突破し、エンジニア向けイベント「技術書典」で頒布した同人誌『完全SIer脱出マニュアル』は、トータル1,800部以上を売り上げ2019年6月には商業出版されるなど、多くのエンジニアから支持されています。

池上さんはエンジニアとしてどういった志向を持ち、これまでどんなキャリアを歩んできたのでしょうか。詳しくお話を伺いました。

プロフィール|池上 純平

東京大学経済学部卒業後、2015年4月に富士通株式会社にSEとして新卒入社し自治体向けシステム開発に携わる。 2016年11月より株式会社プレイドに参画し、開発、採用、技術広報など幅広い役割を担う。 大手SIerからWeb系スタートアップに転職をしてキャリアが広がった経験から、ポッドキャスト『しがないラジオ』を開始。 エンジニアを中心に50人以上のゲストを呼んでキャリアについて語ってもらうスタイルで、累計再生回数25万回を突破。 また、"初めてのエンジニア転職"に関するノウハウをまとめた同人誌『完全SIer脱出マニュアル』は累計で1,800部以上を売り上げ、2019年6月に商業出版化されている。

都庁の面接で学歴以外の強みがない自分に気づいた

ikegami-jumpei 02 ―まずは学生時代の話からお聞かせください。池上さんは開成→東大経済ですが、この進学の背景は?

実は、経済学部だったら就職も少し有利かな程度で、深い理由はありませんでした。

実際に、学生時代は勉強よりもサークル活動に力を入れていました。合唱サークルだったんですが、合唱の技術というよりは、100名以上いる部員をどうまとめるか、合宿をいかに楽しく効果的にできるか、後輩をどうモチベートするかといった組織運営の部分に興味がありました。サークルの存続のために、新歓でも自分からどんどん新入生に声をかけて誘っていましたね。そこから知らない人と話すことへの抵抗感がなくなりました。

―そうしたなかでプログラミングと出会ったきっかけは?

1つは大学4年での就職活動の挫折経験からです。僕はもともと物欲や金銭欲が少なく、公益に貢献できる仕事がしたかったこともあり、東京都庁の採用試験を受けていました。しかし、筆記試験には受かったものの、その後の最終面接で落ちてしまいました。この時は正直ショックでしたね。

都庁の面接は学歴が非公開で、面接官は学生の出身校を知らないし、当然聞いてもくれません。学歴への自信のようなものがどこかにあったと思うのですが、逆にそれがないと自分には何の価値もないんだなと感じるようになりました。そこで学歴以外の自分の強みを身につけないといけないと考えるようになったんです。

もう1つはルームメイトの存在です。大学4年の頃にサークルの友人とルームシェアを始めることになったんですが、その友人が「もう1人ルームメイトとしてエンジニアを募集して、一緒に住みながらプログラミングを教えてもらおう」と言いだしたんです。 当初僕は乗り気ではなかったのですが、試しにやってみようと思って、実際に参加してくれたエンジニアとルームメイトの3人でiPhoneアプリをつくる経験をしました。

結局リリースするまでにはいたりませんでしたが、その過程でプログラミングは自分にもできると感じましたし、技術で社会の仕組みを変えていくことへの興味が湧いてきました。

ー都庁が不合格になったあとの就職活動は?

都庁の試験が終わったのが大学4年の夏ごろ。他はほとんど受けていなかったので、いったん大学を卒業し、既卒であらためて就職活動をはじめることにしました。

「公益に貢献×技術」という考えから、国や自治体のシステム開発という軸で検討しました。その軸に該当する会社はそもそも限られているんですが、その中で富士通から4月に内定をもらいました。

―そうすると、翌年4月の入社までに約1年間も時間がありますよね。その間は何をされていたんですか?

生活費を稼ぐために3つのアルバイトを掛け持ちしてほぼフルタイムで働いていました。小学生向けの学習塾を運営している会社での教材作成、公益財団法人で請け負っていた主婦の復職を支援する事業の事務作業、新卒向け人材サービス会社での学生向けテレアポの3つです。

このなかで特に勉強になったのは新卒向けの人材サービス会社ですね。

就職活動中の学生に電話をかけてイベントやセミナーの参加者を集める仕事なんですが、いきなり電話をしても学生は歓迎してくれません。そこで、学生とコミュニケーションする際に、相手の悩みや課題を聞いて、その悩みにあわせて企業やイベントの情報をピックアップして案内するというやり方をひたすら検証していました。

いま周囲の方に説明が上手いと言っていただけることがありますが、そのベースにはこのアルバイト経験があると思います。1日何十件と電話をするなかで、着実にコミュニケーションスキルが磨かれました。

希望通りの就職と、現場で感じた公共向けシステム開発の難しさ

ikegami-jumpei 03 ―約1年のアルバイト生活を経て、池上さんは2015年の4月に富士通へ入社されます。富士通ではどういった仕事をされていたんですか?

自治体向けのシステム開発です。市役所や区役所の業務用システムのSEとして、職員の方が操作するインターフェイス開発と裏側のデータ処理を担当しました。世の中に必要不可欠なものなので、その点のやりがいは大きかったですね。

入社1年目で新機能のプレゼンを任せてもらいましたし、さらにGitでのバージョン管理、Jenkinsを使った自動化など、当時使っていなかった新しい技術も検証しようという話が出た際にもプロジェクトの旗振り役をやらせてもらいました。

―希望通り公益性の高いプロジェクトに配属されて、エンジニアとしてのやりがいも感じていたと。

はい。ただ、その一方で「このまま続けていていいのかな?」とも思っていました。

COBOLやJavaアプレットによる開発は、業界全体からみると決して汎用的ではありません。SEとして成長はしているものの、汎用性のない方向へキャリアが進んでいるのではないか不安を感じはじめました

あと、公共向けのシステム開発の場合、何かをスピーディーに大きく変えることが難しいんです。自治体の業務を改善したい、社会を変えたいと思っても、すぐにはできなかった。その点にももどかしさを感じていましたね。

―具体的にはどういった難しさですか?

公共向けのシステム開発は、当然ながら自治体のニーズありきです。まず自治体からお願いされて、SIerが入札してはじめてプロジェクトが始まります。開発サイドからなにかを変える提案をしたり、働きかけをしたりする機会はほぼありません。

一方、技術的な要件に関してはSEがすべて決めてしまうので、顧客側には知識が蓄積されにくく、顧客側から開発観点における問題意識や改善提案が生まれにくい構造となっています。 さらに大規模なシステムだとステークホルダーも多いため、一社員ではどうにもしがたい難しさを感じていました。これは公共向けシステムに限らず、受託開発全般の構造的な問題かもしれませんが。

もともとは3年くらい働いてから次のキャリアを考えるつもりでいましたが、より成長するためには早いほうがいいと考えて、入社から1年半で退職しました。

本来もっている価値が正しく伝わらないともったいない

―2016年11月に現職のプレイドへ入社するまでの経緯は?

友人に誘われて、あるスタートアップのカジュアル面談に同席したことがあるのですが、その場にいきなりCTOが出てきて、そのラフさや楽しそうに仕事について話す姿に衝撃を受けたんです。 そして「こんなに気軽に話を聞いてもらえるなら」と思い、転職サイトにも登録し、スカウトを頂いた会社から話を聞くなどしはじめました。最終的にはエージェントさん経由でプレイドへ転職することになりました。

ー当時の企業選びの軸は?

転職活動を始めた当初はそこまで明確に固まっていませんでしたね。自分自身が成長できる環境というか、モダンな開発ツールを使っていて、若くて優秀なエンジニアが多い、そんな会社がいいとは思っていましたが、具体的な職種のイメージまではありませんでした。

ただ、何社か面接を受けていくうちに、ずっとコードを書き続ける開発ではなく、お客さんと話しながら技術的な部分を見る立場、ビジネス寄りの立場の方が自分には向いていると気づきはじめたんです。プレイドの面接でも、「クライアントワークができるエンジニアになりたい」と伝えました。

もうひとつは、富士通がそうだったこともありますが、エンタメなどのtoC系よりはBtoBの方が自分にあっているなと感じていました。そこからBtoBで顧客に対して技術的な提案ができるエンジニアを目指したいと考えるようになったんです。

―プレイドではどういった仕事を?

入社して約2年半になりますが、最初の3ヵ月は「KARTE」の開発をがっつりしていました。その期間に、プロダクトを改善したいとなった時に自分でソースコードに手を入れることができる状態をつくりました。その後はテクニカルサポートとしてクライアントへの技術支援をするようになりました。また導入企業のエンジニア担当者向けに「KARTE」の使い方に関わる情報発信などをしています。

また、そのテクニカルサポートの役割に加えて、最近は採用や技術広報も新たにはじめ、中途採用面接や勉強会の開催などもしています。

―KARTEの情報発信や技術広報などの「情報発信」に注力しているのはなぜなんですか?

以前から「本来もっている価値が正しく伝わらないことで、その潜在的な価値が発揮されていない状況」に対して、とてももったいないと感じていました。

KARTEというプロダクトが本来持っている価値を正しく伝えることで、多くの人に活用され、それぞれの企業の課題解決に繋げたいと考えています。

組織に対しても同じ考えで、プレイドにはとても魅力的なエンジニアの人が大勢いるのに、それが伝わっていないことはとてももったいない。だから社内のエンジニアにイベント登壇機会を提供することなどで、その価値を発信したいと考えています。

次は教育にもチャレンジしたい

―池上さんのこれまでのキャリアのなかで、モヤモヤしていた時期、悩んでいた時期はありますか?

富士通にいた時ですね。思い描いていた仕事を実現できた一方、先ほどお話したような行き詰まり感があり、「このままでいいのか?」と考えていました。

あとはプレイドに転職して間もない頃は、まわりに優秀な人が多いなか、エンジニアとしての自分の価値をどう出せばいいのか悩んでいたと思います。

ただ、そこからKARTEの開発をして、続けてテクニカルサポートをやって、何がどう作られ、顧客にどう使われているのかを理解できました。それがわかったことで、プロダクトに対して「もっとこうした方がいい」とか「こういう情報を発信した方が顧客にとって有益だ」など自分でも提案できるようになり、その頃から価値を出せている実感を得られるようになりました。

―将来的に目指したいことは?

問題意識として、先程お話したような「情報発信を通じてプロダクトの価値を正しく伝える」ことだけだと、プロダクトの真価を発揮させるためには限界があると思っています。

それは、プロダクトが発揮できる価値の上限が、それを使う人のスキルやリテラシーに依存してしまうためです。それを解決するためには、プロダクトを使う人に対して、しかるべき教育・レクチャーが必要だと思います。

例えば、KARTEのプロダクトであれば、導入企業のエンジニア以外の人にもSQLやJavaScriptを教えたりすることで、プロダクトの利用の幅が拡がり、結果的にプロダクトとしての価値が引き出されることに繋がると思います。

一言でまとめると「教育」という立場に関わっていきたいと思っています。 そしてこれは、プレイドの中だけではなく、自分のプライベートでもそこに時間を使いたいと考えています。

実際に、先日の技術書典では『非エンジニアのためのJavaScript』という本を出したんですが、これはまさに同じ問題意識で取り組みました。非エンジニアとエンジニアでは知りたいことが異なる一方で、非エンジニア向けのプログラミング教育に関するコンテンツはあまりにも少ない。非エンジニアの人たちに特化した形で発信をして、ちょっとでも仕事でできることの幅を拡げられるようなサポートをできればと思っています。

―プライベートというと、ポッドキャスト「しがないラジオ」をずっと続けていらっしゃいますが、「しがないラジオ」はもともとどんなきっかけで始めたんですか?

富士通時代の同期と一緒に2人でやっているんですが、2人とも大手SIerからベンチャーに転職した経験があります。ベンチャーで気づいた仕事の楽しさや働き方に関する発見など、「いま思えば当たり前だけど、昔の自分が知らなかったこと」をポッドキャストで伝えたいと思ったのがきっかけです。

運営していくうえで大切にしているのは、ベテランの第一線級のエンジニアというよりは、転職1回くらいの、若いリスナーと世代の近いエンジニアの方にもゲストとして参加してもらうことです。そういった方に、実際に仕事が楽しくなったというケースやそのために実践していることを話してもらうことで、リスナーが一歩踏み出すための後押しができればなと思っています。

また、ポッドキャストだけだと細かい個別の話が多くなりがちなので、体系的な知識やノウハウを提供するガイドのような存在として、『完全SIer脱出マニュアル』を技術書典で頒布し、それがきっかけでこの本は商業出版までされました。こうした活動を通じて、楽しく働ける人を増やしていきたいと考えています。

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ープライベートな活動で今後取り組みたいことは?

これまでは、SIerでのキャリアに悩んでいるエンジニアにとって、レガシーな環境からモダンな環境へチャレンジを促す「会社間の越境」を中心に支援してきました。これからは、例えば先程話したような非エンジニアがエンジニアに越境するような「職種間の越境」も後押しするようなことをやっていきたいと思っています。

職種と職種の壁、会社と会社の壁を高く感じている人が多いと思うのですが、それを溶かすような取り組みを増やしていきたいです。

ネクストアクションにつながる話をしたい

―ここからはメンタリングへの意気込みについて教えてください。普段1on1をする時はどのように話を進めていますか?

普段からエンジニアの採用にも関わっているのでエンジニアのキャリアについて多少の知識はありますが、それを一方的に伝えるだけでは相手が食傷気味になってしまいます。なので、まずは相手の話をじっくり聞くようにしています。相手の悩みや課題をしっかり言葉に出してもらったうえで、それに対して必要十分な情報を伝えていくという進め方です。

あとはできるだけ直近のアクションにつながる話をしたいですね。ビジネス本に書いてあるようなただの「いい話」ではなく、家に帰ってまずやるべきことが見えてくるような、最初の一歩につながる話をしたいです。

―周りからどんな人だと言われますか?

冗談半分で「心がない」と言われることはあります(笑)。感情の起伏が小さい人だと思われているかもしれません。ただ、ある意味で出力が安定している人は話していても安心感があると思うので、常にそうありたいですね。どんな変な話をしても、キレたり不機嫌になったりせずに受け止めてくれる人、というイメージを与えたいです。

―プライベートはどう過ごされていますか?

ゲームはよくします。Nintendo Switchのスプラトゥーン2やスマブラなど。それ以外は仕事とプライべートの線引きがあまりないですね。休みの日も会社に来て、次にやりたいことのリサーチなど仕事とも趣味ともつかないことをしていたりします。ポッドキャストや技術書典の本のアイデアもその中から生まれたりします。仕事は趣味の一部だし、趣味から広がった自分の活動が仕事にも活きていくような、そんな生き方をしたいです。

―ありがとうございました。

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